繰り返すセコイズム。

せこくつつましく、セコ充を目指してセコ活をしています。

Amazonプライムでアジア映画(10)イロイロ(シンガポール)

アジア映画が好きである。Amazonプライムの特典には、香港(主にアクション)や韓国の映画はいろいろあるけれど、他の地域のアジア映画をどのくらい見ることができるのか、これはできるだけ外出を避けつつ、セコ充を目指してセコ活しがいのあるテーマである (※2020年6月時点のAmazonプライム特典視聴情報です)。

 

今回はシンガポールが舞台の『イロイロ』。「ぬくもりの記憶」という副題や、フィリピンからの出稼ぎ労働のメイドと一家の心の交流…というキャッチフレーズを額面通りに受け取ると、だまされる。映画のパッケージ写真も、何だか温かそうな雰囲気をかもし出しているが、だまされてはいけない。私もだまされた口だ。

過剰な演出や、ストーリーの起伏もない。日々の細かいトラブルや忍び寄る不況の影が、少しずつ少しずつ一家を蝕んでいく。日々は淡々と描かれ、やがてメイドを雇えなくなるわけだが、メイドの帰国に際しても「いつか会おうね、ありがとうね(涙)」みたいな展開は無く、感動的なエンディングが待っているわけでもない。メイドとの別れも、淡々と、ひとつの小さな出来事のように差し出されるだけだ。 

イロイロ ぬくもりの記憶(字幕版)

イロイロ ぬくもりの記憶(字幕版)

  • 発売日: 2015/06/05
  • メディア: Prime Video
 

とはいえ、初めはトラブル続きだった息子とメイドの関係には、やがて友人どうしのような親密さが見えはじめてくる。一方で、一家に不況(舞台となった1990年代後半はアジア通貨危機が起こる)が暗い影を落としはじめ、父親は株で大損を抱えた上に失業し、母親もストレスを溜めながら、メイドと息子の姿を遠目に見ている。それにしても、この母親役の演技は、本当に秀逸だ。気だるそうな雰囲気や、イライラしている様子、メイドと息子の間に流れはじめた親密な空気に疎外感や嫉妬からくる苛立ち…といった心の機微がすごく伝わってくる演技力だ。

少年の通う学校に多民族国家シンガポールの姿をかいま見つつ、通貨危機を背景にした当時の不況、また、不況に左右されるフィリピン人出稼ぎ労働者の雇用事情など、映画そのものは、意外に社会的な作品に仕上がった秀作だった。

(また見たい度(★1~5) ★★★★)


フィリピン人メイドと雇い主一家のドラマ!映画『イロイロ ぬくもりの記憶』予告編