繰り返すセコイズム。

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外国人労働者と移民について考える新書5冊

ここのところ、外国人労働者問題とか技能実習生問題とか移民とか、そういった本を固め読みしていた。このあいだは日本に移住して長く暮らす「移民」を中心にしたノンフィクションを読んだが、今回は、2019年から2020年にかけて出版された新書本を固め読みした。複雑な問題ほど、何冊かの視点の異なる本を読んでみないと自分の見方が偏ってしまうので、つい、固め読みをしてしまう。

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ここ最近は、とにかく「外国人労働者」「移民」といった本が数多く出版されている。コロナ禍によって、外国人労働者をめぐる環境は大きく変わってしまったが、 だからこそ、コロナの後にどうなっていくのか、注視が必要だ。単純労働力が不足している日本は、海外(とくに東南アジア圏)からの労働者を受け入れないと成り立たないところまで来ており、実際、経済界からの強い要請もあって、10月1日から中長期滞在の労働者や留学生の渡航緩和に踏み切ったばかりだ。緩和したからといって、はたして、日本は渡航先として選ばれるのかどうか。

ルポ 技能実習生 (ちくま新書) 2020年5月

いちばん面白く(面白く…といったら語弊があるかもしれないが)読んだのが、こちらの本。主にベトナムからの技能実習生についてに書かれ、現地に渡っての取材に基づいているので、まさに「ルポ」的な感じで読みやすい。なぜベトナムの若者たちは日本を目指すのか、技能実習生を送り出す側と受け入れる側の問題点、新たに導入された「特定技能」と従来の「技能実習」との相違点、なぜ「特定技能」が広がりを見せないのかという課題点、韓国の「雇用許可制度」との比較…などなど、語り口は明快で分かりやすい。

「潰れかかった会社を存続させることが目的なら、外国人労働者の受け入れはやめた方がいい」「日本もグローバルスタンダードに立たないと、質の悪い労働者しか集まらなくなるだろう」「(ベトナム国内の平均所得が上がっても、働き先として)日本は選ばれる国であり続けられるのか」といった、警句にも満ちている。

ルポ 技能実習生 (ちくま新書)

ルポ 技能実習生 (ちくま新書)

 

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移民クライシス (角川新書) 2019年4月

こちらも、各方面に取材をしており、ルポルタージュとして面白く読んだ。朝日新聞の「奨学生」に名前を借りて新聞配達に従事させる現場、日本語学校(偽装留学生)の問題ばかりではなく、日本語学校でブラックな仕事に従事させられた日本人にも取材をしており、切り口がユニークだ。

コンビニは24時間、弁当は安く買いたい、宅配便は決まった時間に届けてもらいたい、新聞は朝夕きちんと届けてもらいたい…こうした安価で便利なサービスや商品の裏側には、単純労働に従事する彼らの存在があり、安価なサービスを求めている我々の問題なのだと突き付けられている気持ちにさせられた。

国家と移民 (集英社新書)  2020年6月

こちらは、長年、外国人労働者を支援する活動をしてきた著者による1冊。したがって、描かれる視点は、奴隷的な労働に従事させられたり、非人権的な扱いを受けたり、「ヘイト」にさらされる外国人らの姿が中心になってしまう。日本は人権的な国家だと思っている人にとっては、ちょっと衝撃的な内容だ。ここに描かれた「移民」の姿がすべてではないが、しかし、これがひとつの側面であることもまた事実なのだ。

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ふたつの日本 (講談社現代新書) 2019年3月

とくに何が…という切り口のある本ではないが、統計やグラフなどの数字を使った解説に始まり、外国人労働者技能実習生とその失踪問題、特定技能制度について…などなど、各論がよくまとまった1冊。最初に「移民」「外国人労働者」について俯瞰するには、ちょうど手ごろ感のある本。

移民の経済学 (中公新書)  2020年1月 

こちらは、純粋に統計的な「数字」だけを追いかけて書かれた1冊。まるで研究レポートを読むような気分にさせられる。したがって、読み物としては面白みに欠けてしまうが、「移民」や「外国人労働者」について、たしかに、こうした視点の本も必要だ。

 

そして、10月31日に開幕する第33回東京国際映画祭では、ベトナム人技能実習生を描いた「海辺の彼女たち」が上映される。こちらも注目。

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