繰り返すセコイズム。

せこくつつましく、セコ充を目指してセコ活をしています。

となりに住む「移民」の人たちを考える3冊

いずれも2019年に書かれた、主に日本で暮らす移民についてのノンフィクション。最近の本であるのに、書かれていることは何だか遠い昔のことのようにも感じる。新型コロナの感染拡大で、海外との往来に大きな制約がかかることとなって早数ヶ月。海外旅行に行けない、仕事で駐在に行けない(あるいは日本に帰国できない)ということが常態化しつつある一方で、コロナ禍の煽りを大きく受けてしまったのは、これらの本に描かれた彼らのような、生活の基盤や仕事の保障も不安定な日本の社会で生きる外国人なのかもしれない。そんな今だからこそ、日本に暮らす彼らのことを気に掛けつつ、読んでみたい本をチョイス。

日本の異国:在日外国人の知られざる日常

東京都内には、「リトル〇〇」と呼ばれるような、外国人のコミュニティが数多く存在する。この本は、東京都内あるいは東京近郊の街に根付いて暮らす外国人たちの姿を追ったルポルタージュ。フィリピン、ミャンマー、インド、バングラデシュベトナム、タイ、モンゴル、中国…実に多種多様だ。国もバラバラであるのみならず、同国人であっても、世代や日本にやってきたバックグラウンドもバラバラだ。たとえば、1960年代・70年代に難民としてやってきたベトナム人と、新大久保界隈に暮らす若いベトナム人との間には、大きな隔世の感がある。

この本に書かれているような、インバウンド需要を見込んで雇われていた外国人は、今、どうしているのだろうか。自分の国に帰ることはできたのだろうか。あるいは、すでに日本に生活の基盤があり、自分の国にはもう何の縁も無くなっている人たちも多いのかもしれない。飲食店を経営しているような人は、さぞかし厳しいことだろう。本を読みながら、そういうことが心配になってしまった。

日本の異国: 在日外国人の知られざる日常

日本の異国: 在日外国人の知られざる日常

 

団地と移民 課題最先端「空間」の闘い

高度成長期とともに歩んだ団地の歴史、高齢者の姿ばかりになった団地の現在、そこに新たな住人としてやって来た移民たちと生活空間を共にすることで生まれる誤解と手探りの共生への道、ヘイトと偏見にさらされる団地の移民たち、戦争の記憶を引きずりながらも日本に帰国した残留孤児の暮らし、さらには、移民たちとの分断の最前線にあるパリの団地の姿まで、多方面から「団地」を描いたルポルタージュ

副題にある通り、「団地」はこれからの日本が直面する課題難題を先取りした縮図のようでもある。超高齢化社会、増える移民、誤解と偏見を克服して彼らと共生できるかどうか…と、「団地」は問い掛けてくるのである。

団地と移民 課題最先端「空間」の闘い

団地と移民 課題最先端「空間」の闘い

  • 作者:安田 浩一
  • 発売日: 2019/03/23
  • メディア: 単行本
 

芝園団地に住んでいます : 住民の半分が外国人になったとき何が起きるか 

『日本の異国』『団地と移民』でも言及されていた、埼玉県川口市芝園団地の話。著者自身が芝園団地に暮らし、主に中国人たちと団地での生活空間を共にする生活者の視線で描かれているので、いわゆるルポルタージュの第三者的な語り口ではなく、「私」と「あなたたち」という、当事者としての語りであるのが興味深い。

ある町のある場所に多くの外国人がかたまって暮らしていることに、我々は時として驚いてしまうが、それは裏を返せば、日本側の問題でもある。日本の賃貸住宅事情は何かと厳しく、他国からやって来た彼らの壁になる。そうなると、保証人なしでも住むことが可能なUR賃貸住宅に自然と集まることになるのは道理…ということになる。 

芝園団地も、他の団地の例に漏れず、もともとの住民は高齢者ばかりになり、一方で、中国人の働き盛りの世代が数多く入居してきたことにより、団地もいろいろなジレンマや摩擦を抱えることとなる。著者はひとりの生活者として、若い中国人入居者たちの手を借りながら持続性のある団地を…という想いを抱き、年配の日本人住民と中国人住民との間で悩みながら試行錯誤する。その姿には素直に好感が持てた。

芝園団地に住んでいます : 住民の半分が外国人になったとき何が起きるか

芝園団地に住んでいます : 住民の半分が外国人になったとき何が起きるか

  • 作者:大島 隆
  • 発売日: 2019/10/04
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)