繰り返すセコイズム。

せこくつつましく、セコ充を目指してセコ活をしています。

Amazonプライムでアジア映画(11)超人X.(ベトナム)

下高井戸シネマベトナム映画『ソン・ランの響き』を見てきた勢いで、Amazonプライムで『超人X.』というB級感あふれるベトナム映画を見てしまったのである。『ソン・ランの響き』がとても良かったので、本当はそちらの映画の感想を書きたいという気持ちを我慢しつつ、ここはやっぱりAmazonプライムだ(※2020年6月時点のAmazonプライム特典視聴情報です)。

 

そうそう、これだよ、これ!こんなアホみたいな展開のB級映画を待っていたんだよ!…と思う一方で、冷静な自分が「なんでこんな映画を見てるんだろうなあ」と語りかけてくる。このジレンマこそが、B級の醍醐味だ。『超人X.』も、このジレンマをたっぷり味わえる映画なのだった。 

超人X.(字幕版)

超人X.(字幕版)

  • メディア: Prime Video
 

男性アイドルのナムを愛するゲイの青年スンが、黒いマスクとボディスーツに正体を隠し、超人的な身体能力で強盗団と戦う…という、これだけ書くと身も蓋もない話であるが、実際に身も蓋もない話なのである。しかし、強盗団も超人的な身体能力を手に入れ、青年スンは窮地に陥るが、そこに現れたのは、なんと、やはり同じように超人化したスンの母親と愛しのナムなのだった。そして、2人の加勢を受けたスンたちは強盗団を打ち破り、めでたしめでたし…と言いたいところなのだが、最後はみんなで超人化して戦い、もはや誰が超人的ヒーローなのだか分からない、超人がいっぱい状態という、唖然とするような展開なのだった。

(また見たい度(★1~5) ★)


Siêu Nhân X Official trailer Khởi chiếu Tết 2015

 

Amazonプライムでアジア映画(10)イロイロ(シンガポール)

アジア映画が好きである。Amazonプライムの特典には、香港(主にアクション)や韓国の映画はいろいろあるけれど、他の地域のアジア映画をどのくらい見ることができるのか、これはできるだけ外出を避けつつ、セコ充を目指してセコ活しがいのあるテーマである (※2020年6月時点のAmazonプライム特典視聴情報です)。

 

今回はシンガポールが舞台の『イロイロ』。「ぬくもりの記憶」という副題や、フィリピンからの出稼ぎ労働のメイドと一家の心の交流…というキャッチフレーズを額面通りに受け取ると、だまされる。映画のパッケージ写真も、何だか温かそうな雰囲気をかもし出しているが、だまされてはいけない。私もだまされた口だ。

過剰な演出や、ストーリーの起伏もない。日々の細かいトラブルや忍び寄る不況の影が、少しずつ少しずつ一家を蝕んでいく。日々は淡々と描かれ、やがてメイドを雇えなくなるわけだが、メイドの帰国に際しても「いつか会おうね、ありがとうね(涙)」みたいな展開は無く、感動的なエンディングが待っているわけでもない。メイドとの別れも、淡々と、ひとつの小さな出来事のように差し出されるだけだ。 

イロイロ ぬくもりの記憶(字幕版)

イロイロ ぬくもりの記憶(字幕版)

  • 発売日: 2015/06/05
  • メディア: Prime Video
 

とはいえ、初めはトラブル続きだった息子とメイドの関係には、やがて友人どうしのような親密さが見えはじめてくる。一方で、一家に不況(舞台となった1990年代後半はアジア通貨危機が起こる)が暗い影を落としはじめ、父親は株で大損を抱えた上に失業し、母親もストレスを溜めながら、メイドと息子の姿を遠目に見ている。それにしても、この母親役の演技は、本当に秀逸だ。気だるそうな雰囲気や、イライラしている様子、メイドと息子の間に流れはじめた親密な空気に疎外感や嫉妬からくる苛立ち…といった心の機微がすごく伝わってくる演技力だ。

少年の通う学校に多民族国家シンガポールの姿をかいま見つつ、通貨危機を背景にした当時の不況、また、不況に左右されるフィリピン人出稼ぎ労働者の雇用事情など、映画そのものは、意外に社会的な作品に仕上がった秀作だった。

(また見たい度(★1~5) ★★★★)


フィリピン人メイドと雇い主一家のドラマ!映画『イロイロ ぬくもりの記憶』予告編

 

Amazonプライムでアジア映画(9)ブランカとギター弾き

アジア映画が好きである。Amazonプライムの特典には、香港(主にアクション)や韓国の映画はいろいろあるけれど、他の地域のアジア映画をどのくらい見ることができるのか、これはできるだけ外出を避けつつ、セコ充を目指してセコ活しがいのあるテーマである (※2020年6月時点のAmazonプライム特典視聴情報です)。

今回はフィルピン・マニラが舞台の『ブランカとギター弾き』(2015年)。といっても、制作はイタリア、監督は日本人の長谷井宏紀なので、ここで取り上げる枠での純粋なアジア映画ではないかもしれないが、フィリピンを舞台にした映画は珍しいので、チョイスしてみた。

ブランカとギター弾き(字幕版)

ブランカとギター弾き(字幕版)

  • 発売日: 2018/03/02
  • メディア: Prime Video
 

スリで生計を立てている孤児の女の子ブランカと、盲目のギター弾きピーター。生活環境のハンディキャップと、身体的なハンディキャップ、それぞれの事情を抱える2人が、相手を思いやりながら、寄り添って生きていく姿を描く。ブランカの歌声で仕事にありついて順調な生活が待っているかと思いきや、そうは問屋が卸さない、トラブルに巻き込まれ、2人は離れ離れになり…といった困難を乗り越えていく。少女ブランカの健気な可愛さと相まって、間違いのない王道的な人情映画作品に仕上がっていた。 

(また見たい度(★1~5) ★★)


長谷井宏紀監督作!映画『ブランカとギター弾き』予告編

 

Amazonプライムでアジア映画(8)29歳問題(香港)

アジア映画が好きである。Amazonプライムの特典には、香港(主にアクション)や韓国の映画はいろいろあるけれど、他の地域のアジア映画をどのくらい見ることができるのか、これは外出自粛を実行しつつ、セコ充を目指してセコ活しがいのあるテーマである (※2020年6月時点のAmazonプライム特典視聴情報です)。

香港映画と言えば、アクション映画というイメージが強く、実際にAmazonプライムでアクション映画を探すのはたやすいのだが、アクション以外となると、なかなか難しい。

というわけで『29歳問題』(2017)である。明らかに、女性向けに、そして、この邦題(原題は『29+1』)からも分かるように、特定の年齢層を狙っているかのような映画である。30歳を目前に迎えたひとりの女性・ヨックワンが、仕事に悩み、恋人との将来に悩み…というところから話は進んでいく。仕事も順調、友人とも楽しく時間を過ごし、恋人とも順調…と思いきや、そうした順調を絵に描いたような階段から降りることとなる。どこかで聞いたことのあるような話であるが、裏を返せば、どこの国でも女性にとっては30歳…というか、20代との別れが1つの区切りなのだろう。それは1つの普遍的なテーマなのだから、どこかで聞いたことのあるような話になってしまうのは仕方がない。

私のようないい歳のおじさんが見るには、何だか場違いな映画である。 もしもこれが映画館であれば、残念ながら、私の存在は浮いてしまうだろう。

29歳問題(字幕版)

29歳問題(字幕版)

  • 発売日: 2019/03/02
  • メディア: Prime Video
 

人生の階段からちょっと降りてひと休みしたヨックワンは、旅行中で留守にしている女性・ティンロの部屋を仮住まいのアパートとして暮らすこととなる。そして、ヨックワンは、ティンロの残した日記や自撮りのビデオを通して、彼女が自分と同じ年の同じ誕生日に生まれた女性だと知ることになる。ビデオや日記から伝わってくるハッピーそうなティンロは、ヨックワン自身の生きてきた道とはまったく違っているわけだが、そこで彼女は「幸せとは何か?」ということを、ちょっと立ち止まって考えることになる。これまたどこかで聞いたことのあるような話であるが、いったんリセットして生き方を見つめ直すこともまた、普遍的なテーマである。私自身も、いつも生き方を見つめ直している。見つめ直しすぎると、リセットするポイントを見失うので、かえって困りものだ。見直しもほどほどにしたいものだ。

この映画が面白いのは、ヨックワンとティンロの交流が、最後はファンタジーっぽく描かれることだ。大人の女性らの葛藤を、深刻になりすぎず、軽やかに仕上げたところに好感を持つことができた。

(また見たい度(★1~5) ★★)


香港映画『29歳問題』予告編

Amazonプライムでアジア映画(7)青いパパイヤの香り(フランス=ベトナム)

アジア映画が好きである。Amazonプライムの特典には、香港(主にアクション)や韓国の映画はいろいろあるけれど、他の地域のアジア映画をどのくらい見ることができるのか、これはできるだけ外出を避けつつ、セコ充を目指してセコ活しがいのあるテーマである (※2020年6月時点のAmazonプライム特典視聴情報です)。

さて。フランスとベトナムの共同制作のトラン・アン・ユン監督の『青いパパイヤの香り』(1993年)。かつて映画館で見たときに、上映中に心地良い眠りに包まれてしまったのは、今となっては良い思い出である。

セリフは極力排され、人物の表情で感情を表現し、そこに細やかな画作りにこだわった映像の美しさが加わる。カンヌで「カメラドール賞」をもらうわけだが、なるほど、カンヌで受けそうなアート作品に仕上がっている。  

青いパパイヤの香り(字幕版)

青いパパイヤの香り(字幕版)

  • メディア: Prime Video
 

 舞台は1951年のサイゴン(現ホー・チ・ミン)。10歳の少女ムイは奉公に出される。優しい奥様、気難しい大奥様、悪戯な子供たち、先輩奉公人は頼りがいのある婆さん。唯一、ミステリアスな存在は、旦那さま。楽器を奏でるだけの、生きているのか死んでいるのか分からないような、無為の日々。時々ふらっと姿を消して数日家には戻らず、また何事もなかったかのようにふらりと戻ってくる。一見幸せそうに見える裕福な家庭の隠された秘密や不幸を覗き見ることが、少女ムイの楽しみだった…というような、「家政婦が見た」のような事件は、残念ながら、起こらない。

そして、美しく成人したムイは、奉公先からお暇を出され、長男の友人クェンさん宅に奉公することとなる。ムイが少女時代から憧れていたクェンさんだ。よく働く美人の家政婦さんが住み込みでやって来るだなんて、それって「逃げ恥」のガッキーなのか…というような、男たちが妄想し夢を見る展開は、残念ながら、起こらない。と思いきや、モテ男のクェンさんはひそかにムイを想い、婚約者と別れ、ムイと結ばれるのだった。一種のシンデレラストーリーでもある。

ムイの少女時代と大人時代で、1本で二度楽しめる映画なのだった。

(また見たい度(★1~5) ★★)

 
『青いパパイヤの香り』予告編