繰り返すセコイズム。

せこくつつましく、セコ充を目指してセコ活をしています。

Amazonプライムでアジア映画(6)冬冬の夏休み(台湾)

アジア映画が好きである。Amazonプライムの特典には、香港(主にアクション)や韓国の映画はいろいろあるけれど、他の地域のアジア映画をどのくらい見ることができるのか、これは外出自粛を実行しつつ、セコ充を目指してセコ活しがいのあるテーマである。(※2020年5月時点のAmazonプライム特典視聴情報です)

 

今日も台湾の侯孝賢ホウ・シャオシェン)監督作品から、『冬冬の夏休み』(1984年)。これまたずいぶん前に劇場で見て以来、ものすごく久しぶりだ。母が病気になり、父親は看病で忙しくなったため、夏休みのひとときを母方のおじいさんの家で過ごすことになった冬冬(トントン)と、妹の婷婷(ティンティン)の物語。

今は、日本のドラマや映画を見れば、「上手い」と驚かされる子役はたくさんいる。けれども、それが「自然」かどうかと言われたら、そうではないだろうと思う。しかし、この映画の子供たちはとても「自然」だ。こんなに自然に撮れるものなのか…と、演技どうこうを超えた子供たちの一挙一動に目が離せなくなる。

それにしても、冬冬のおじさんがポンコツすぎるのが、実に面白い。冬冬を北京に迎えに行った帰りの電車の途中駅で置いてけぼりになりる、彼女を妊娠させてしまって実家を追い出される、旧友の強盗犯を匿って自分まで警察の厄介になる、痔の手術をして動けなくなる…などなど、初めから終わりまでポンコツなのだった。

(また見たい度(★1~5) ★★★★)


映画『冬冬(トントン)の夏休み』『恋恋風塵(れんれんふうじん)』予告編

 

Amazonプライムでアジア映画(5)恋恋風塵(台湾)

アジア映画が好きである。Amazonプライムの特典には、香港(主にアクション)や韓国の映画はいろいろあるけれど、他の地域のアジア映画をどのくらい見ることができるのか、これは外出自粛を実行しつつ、セコ充を目指してセコ活しがいのあるテーマである。(※2020年5月時点のAmazonプライム特典視聴情報です)

 

ということで、台湾の侯孝賢ホウ・シャオシェン)監督の『恋恋風塵』(1987年)を見る。ずいぶん前に劇場で見て以来、ものすごく久しぶりだ。今でも台湾映画特集があれば、そのたびに必ず上映されるであろう、台湾映画史には外せない作品。

1960年代の炭鉱のある山村で幼馴染のように育った若い男女が、台北に働きに出てきて、お互いのことを意識し始め、しかしそれは結ばれることなく、静かに終わる。大きな出来事が起こるわけでもないが、青春映画、失恋映画としてみても、胸に沁みる映像だ。

私は、台湾で話されている華語が聞き取れたり話せたりするわけではないが、映画の中で話されている言葉は、台湾に行ったときに耳にしていたような台湾華語の響きではないことは、なんとなく分かる(閩南語という方言の一種)。

田舎の炭鉱町と台北という都市、公用語である台湾華語と方言の閩南語…などなど、映画の中には、中央と地方という対比が描かれ、たんなる青春映画の枠に収まらない、とても社会的な映画である。逆をいえば、映画の舞台となった当時の社会状況、そして、映画が作られた当時の社会状況(1987年は戒厳令解除の年でもある!)を、純粋な青春映画として昇華させた侯孝賢の手腕は、本当に素晴らしい。あらためて、この『恋恋風塵』が好きになった。

(また見たい度(★1~5) ★★★★★)


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Amazonプライムでアジア映画(4)オマールの壁(パレスチナ)

Amazonプライムでアジア映画を見るのであれば、中国、香港、韓国あたりの作品を探せばいろいろ出てくるのであるが、ここはちょっと趣向を変えて、他の国に検索の範囲を広げてみることにしたのである。Amazonプライムの特典の中で、どれだけアジア映画を見ることができるのだろう。これこそ、ステイホームを具現化しつつ、セコ充を目指してセコ活しがいのあるテーマである。

前回『パラダイス・ナウ』に引き続き、ハニ・アブ・アサド監督によるパレスチナを舞台にした映画『オマールの壁』(2013)を視聴。(※2020年5月時点のAmazonプライム特典視聴情報です) 

本当は、もっと気楽なコメディーやロマンスや格闘ものを見ながら、お気楽な気持ちでブログに書きつけたいという思いで「Amazonプライムでアジア映画を」という記事を始めたのである。しかし、前回今回と、選択した映画のおかげで、私の気分が深刻で神妙なものになってきてしまったことに愕然としている。なんという外出自粛生活だろうか。

オマールの壁

オマールの壁

  • 発売日: 2017/03/03
  • メディア: Prime Video
 

 映画の冒頭、主人公が巨大な壁を乗り越えるシーンから始まるのだが、いったいこの巨大な壁は何なんだろうと思って調べたら、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区イスラエルを隔てるための「分離壁」と呼ばれる壁なのだった。イスラエル側が建設を進めるこの壁によって、イスラエルは自国内で起こる自爆テロ実行犯の侵入を未然に防ぐことができるようになったと訴えているが、パレスチナ側にしてみれば、刑務所のように閉じ込められたも同然で、また、イスラエル側に取り残されたパレスチナ人との行き来を困難なものにした。世界を見渡せば、まだまだ知らないことが多い。映画を見ることは、それを知るきっかけを与えてくれる。

映画は、パン屋の青年が危険をかえりみずに分離壁を乗り越えて恋人に会いに行くという純粋なラブストーリーなのかと思いきや、幼馴染の仲間らとイスラエル兵を襲撃したことに端を発して、彼らの関係がだんだん変わっていき、悲しい結末に向かっていく。仲間と恋人の禁断の裏切り行為、そこにつけ込むイスラエル側の捜査官…『パラダイス・ナウ』は自爆テロに向かう青年ふたりを描いてイスラエルパレスチナの分断を主眼にしていたが、『オマールの壁』ではパレスチナ人同士の分断を描く。こうなるともう、彼らには破滅的な最後しか用意されていないのだった。

(また見たい度(★1~5) ★★★★)


映画『オマールの壁』予告編

 

Amazonプライムでアジア映画(3)パラダイス・ナウ(パレスチナ)

Amazonプライムでアジア映画を見るのであれば、中国、香港、韓国あたりの作品を探せばいろいろ出てくるのであるが、ここはちょっと趣向を変えて、他の国に検索の範囲を広げてみることにしたのである。Amazonプライムの特典の中で、どれだけアジア映画を見ることができるのだろう。これこそ、ステイホームを具現化しつつ、セコ充を目指してセコ活しがいのあるテーマである。

今回は、パレスチナを舞台にした映画パラダイス・ナウ』(2005)を視聴。ハニ・アブ・アサドによる監督作品だ。中東を「アジア」のくくりで語るのは、たしかに違和感がある。地理的には欧州に近く、文化宗教的にも政治的にも、歴史を紐解けばやはり欧州とは切っても切り離せない。しかし、たとえば国際サッカーを見れば中東から東アジアまで「アジア」の括りになるのだから、まあ、いいか。細かいことは気にしない。(※2020年5月時点のAmazonプライム特典視聴情報です) 

パラダイス・ナウ』は、自爆テロに向かう青年ふたりの葛藤を描いた作品。タイトルを見て誤解される方もいるかもしれないが、けっして「パラダイスなう」「天国なう」のような、Twitterなどでいうところの「〇〇なう」みたいなお気楽な映画ではない。そこは要注意だ。映画のフライヤー画像を見ていただければお分かりのように、青年らの目は笑っていない。とても「天国なう」と言い出すような雰囲気でもない。

パラダイス・ナウ(字幕版)

パラダイス・ナウ(字幕版)

  • 発売日: 2018/05/23
  • メディア: Prime Video
 

イスラエルパレスチナの歴史・政治・社会状況を理解するのは難しく、当然、この映画にもそういった複雑な背景が存在している。パレスチナ人がすべてパレスチナ自治区内で暮らしているのかといえば、そういうわけでもなく、イスラエル内にもパレスチナ人はいる。また、パレスチナ自治区内でも自治のレベルが細かく区分され、パレスチナが行政権も治安権も持っている区域と、行政権はパレスチナにあるけど治安権はイスラエルが握っている区域がある。しかし、いずれの区域も細かく分断され、イスラエルの行政と治安によって包囲されている。

というような背景を簡単に理解しつつ、青年らが暮らすナブルスは、行政も治安もパレスチナに認められている地域なのだが、それでもイスラエルに包囲された監獄の檻のような状況であることには変わらず、青年らはその現状を打破するための戦い方の手段として、自爆テロという戦い方を選択するしかないという、まさに八方ふさがりの行き場のない状態だ。

クソみたいな現実を生きるくらいなら、頭の中にしかない天国だといわれようとも、神の思し召しで天国に逝ったほうがいい。青年の一人ハーレドはそのような言葉を唾棄する。自爆テロの実行者であるもう一人の青年サイードは、感情がたかぶったり、取り乱したり、他人の意見に心を動かされたりということもなく、決行の日を迎える。そうした袋小路にある青年を淡々と描き切ったことで、かえって緊張感を強いられ、結末まで目が離せないのだった。

いつ解決するとも分からない、出口の見えないパレスチナ問題がある限り、この映画の冷徹な鮮烈さは、失われることがないのだろう。

(また見たい度(★1~5) ★★★★)


映画 『パラダイス・ナウ』

 

Amazonプライムでアジア映画(2)すれ違いのダイアリーズ(タイ)

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昨日はタイの『ジャイアント・チリペッパー』というB級アクション映画でそこそこ楽しめたので、今日もタイの映画をチョイス。『すれ違いのダイアリーズ』(2014、タイ)である。B級アクション映画から一転して、ほんわかと心温まるロマンスものだ。 

すれ違いのダイアリーズ

すれ違いのダイアリーズ

  • メディア: Prime Video
 

あらすじは予告編動画にお任せするとして、雄大な風景をバックに、舞台は水上学校。この広々とした河の流れだけで、ご飯3杯はいける。とにかく映像がきれいである。ヒロインの女性もきれいである。ちょっとこれは面白いかもしれないぞ…と、始まって5分くらいで心をつかまれてしまったのだった。
しかし、いくらなんでも、2人はすれ違いすぎである。ニアミスしながらも、すれ違う。もどかしい。じれったい。いったい、いつ2人は出会うのか。このまま2人は出会わないんじゃないか。じらしプレイである。そんなことに悶々としながら、上映時間もどんどんなくなっていってしまう…と思ったら、残り2分くらいで2人はようやく顔を合わせてくれたのだった。リピート視聴してもいいな…と思える映画だった。

(また見たい度(★1~5) ★★★★)


『すれ違いのダイアリーズ』予告編