繰り返すセコイズム。

せこくつつましく、セコ充を目指してセコ活をしています。

Amazonプライムでアジア映画(3)パラダイス・ナウ(パレスチナ)

Amazonプライムでアジア映画を見るのであれば、中国、香港、韓国あたりの作品を探せばいろいろ出てくるのであるが、ここはちょっと趣向を変えて、他の国に検索の範囲を広げてみることにしたのである。Amazonプライムの特典の中で、どれだけアジア映画を見ることができるのだろう。これこそ、ステイホームを具現化しつつ、セコ充を目指してセコ活しがいのあるテーマである。

今回は、パレスチナを舞台にした映画パラダイス・ナウ』(2005)を視聴。ハニ・アブ・アサドによる監督作品だ。中東を「アジア」のくくりで語るのは、たしかに違和感がある。地理的には欧州に近く、文化宗教的にも政治的にも、歴史を紐解けばやはり欧州とは切っても切り離せない。しかし、たとえば国際サッカーを見れば中東から東アジアまで「アジア」の括りになるのだから、まあ、いいか。細かいことは気にしない。(※2020年5月時点のAmazonプライム特典視聴情報です) 

パラダイス・ナウ』は、自爆テロに向かう青年ふたりの葛藤を描いた作品。タイトルを見て誤解される方もいるかもしれないが、けっして「パラダイスなう」「天国なう」のような、Twitterなどでいうところの「〇〇なう」みたいなお気楽な映画ではない。そこは要注意だ。映画のフライヤー画像を見ていただければお分かりのように、青年らの目は笑っていない。とても「天国なう」と言い出すような雰囲気でもない。

パラダイス・ナウ(字幕版)

パラダイス・ナウ(字幕版)

  • 発売日: 2018/05/23
  • メディア: Prime Video
 

イスラエルパレスチナの歴史・政治・社会状況を理解するのは難しく、当然、この映画にもそういった複雑な背景が存在している。パレスチナ人がすべてパレスチナ自治区内で暮らしているのかといえば、そういうわけでもなく、イスラエル内にもパレスチナ人はいる。また、パレスチナ自治区内でも自治のレベルが細かく区分され、パレスチナが行政権も治安権も持っている区域と、行政権はパレスチナにあるけど治安権はイスラエルが握っている区域がある。しかし、いずれの区域も細かく分断され、イスラエルの行政と治安によって包囲されている。

というような背景を簡単に理解しつつ、青年らが暮らすナブルスは、行政も治安もパレスチナに認められている地域なのだが、それでもイスラエルに包囲された監獄の檻のような状況であることには変わらず、青年らはその現状を打破するための戦い方の手段として、自爆テロという戦い方を選択するしかないという、まさに八方ふさがりの行き場のない状態だ。

クソみたいな現実を生きるくらいなら、頭の中にしかない天国だといわれようとも、神の思し召しで天国に逝ったほうがいい。青年の一人ハーレドはそのような言葉を唾棄する。自爆テロの実行者であるもう一人の青年サイードは、感情がたかぶったり、取り乱したり、他人の意見に心を動かされたりということもなく、決行の日を迎える。そうした袋小路にある青年を淡々と描き切ったことで、かえって緊張感を強いられ、結末まで目が離せないのだった。

いつ解決するとも分からない、出口の見えないパレスチナ問題がある限り、この映画の冷徹な鮮烈さは、失われることがないのだろう。

(また見たい度(★1~5) ★★★★)


映画 『パラダイス・ナウ』