Amazonプライムでアジア映画(15)漂うがごとく(ベトナム)
アジア映画が好きである。Amazonプライムの特典には、香港(主にアクション)や韓国の映画はいろいろあるけれど、他の地域のアジア映画をどのくらい見ることができるのか、これはできるだけ外出を避けつつ、セコ充を目指してセコ活しがいのあるテーマである(※2020年7月時点のAmazonプライム特典視聴情報です)。
ベトナム映画から『漂うがごとく』。トラン・アン・ユンを想起させるような、アート色が強め映画である。暗めの映像は『シクロ』を、よけいな音を排した静けさは『青いパパイヤの香り』を思い出す。
ハノイで旅行ガイドとして働くズエンは、タクシードライバーをしている年下のハイと出会って三ヶ月で結婚。ハイは新婚なのにズエンにも手を触れようとしない。ズエンは、そんなハイに物足りなさを感じている。ある日、ズエンは親友のカムという女性から、トーという男のところに手紙を届けるように頼まれる。すると、トーにいきなり襲われてキスをされたりしてしまう。いきなり襲いかかるトーもトーだが、トーを紹介したカムという女は何かが起こるということを知っての確信犯だったろうし、ズエンも新婚の旦那とはまったくタイプの違うワイルドなトーに惹かれていってしまう。ハイも相変わらず美人な年上女房には手を触れないし、近所の女の子とドライブに行ったりお風呂を貸してあげたり(いやらしい意味ではないが)、なんだかもう、ちょっと壊れた人たちのオンパレードである。
ただの雰囲気映画なのか?それとも上質なアート作品なのか?…というせめぎ合いに陥ってしまった時点で、私はこの映画が好みではないのかもしれない。好みの問題と言ってしまうと、身も蓋もないけれど。
(また見たい度(★1~5) ★)
新型コロナ感染再拡大下のアートめぐり備忘録
最近の休日は、美術館や図書館などに行っても、繁華街は出歩かず、用事を済ませたら寄り道もせずにさっさと帰宅するような日々である。美術館は、最近は日時指定制を取り入れているところも多く、空いていて人との距離も取れるし、喋っている人もいないし、比較的、安心のできる場所だ。
ピックアップしてみたら日本の現代アートが多くなってしまったのは、コロナ状況下で移送できる手段(とくに海外から)が限られてしまったせいかもしれない。(2020年7月24日時点での情報です)
「あるがままのアート」(東京藝術大学大学美術館)
2020年7月23日~9月6日。日時指定予約制。無料。
桶田コレクション展「A NEW DECADE」(スパイラルガーデン)
2020年7月23日~8月10日。日時指定予約制。無料。
2020年7⽉10⽇〜9⽉27⽇。1000円。
SUPER LABO STORE TOKYO 森山大道 「沖縄 s49」
2020年6月26日(金)~8月22日(土)。
1974年に撮影した那覇を中心とした沖縄の情景。
ギャラリーバウハウス「ロバート・フランク大回顧展」
Part1:2020年7月1日(水)~9月19日(土)、 Part2:2020年9月24日(木)~11月21日(土)
『The Americans』で知られるロバート・フランク。www.gallery-bauhaus.com
きぼうのかたち 原美術館コレクション(ハラミュージアムアーク)
絵画のミカタ 5人のアーティストとみる群馬県立近代美術館のコレクション(群馬県立近代美術館)
KAMU kanazawa
レアンドロ・エルリッヒの新作《INFINITE STAIRCASE》…見てみたい…
2020年6月27日~8月23日。
2年前(2018年)の水戸芸術館の企画展もインパクトがあった。見たい。
奇才 江戸絵画の冒険者たち(あべのハルカス美術館)
2020年9月12日~ 11月8日。
東京展は行くことができなかったので、行きたいところだが…
2020年5月26日~10月4日。日時指定予約制。
DIC川村記念美術館「開館30周年記念展 ふたつのまどか」
2020年6月16日(火) ~ 11月29日(日)
日時指定の予約制。最寄駅から無料シャトルバスでの送迎は当面は中止とのこと。シャトルバスがないと行くのは厳しい。
新型コロナ感染拡大下の中で、なんとかキャンペーンが始まったものの、日本国内の旅行に行くのもままならない。様子を見ながら、地方の美術館にも足を運んでみたいものだ。
旅先では人と交わらない(自分は気ままなひとり旅ばかりだが)、人の集まりそうな観光スポットには行かない、宿泊先で大浴場や温泉は利用しない、食事もバイキング形式であれば利用しない…と、自衛策だけではなく、他人への接触も気を遣ったりもしなくては。
タイの社会と現代史を違う角度から見てみる3冊
富田克也監督の「バンコクナイツ」という映画があり、この映画の中ではタイの詩人ジット・プミサクの詩が引用され、そしてジット・プミサクの幽霊が出現し、その幽霊役をタイのバンド「カラワン」のリーダーであるスラチャイ・ジャンティマトーンが演じている。プミサクもスラチャイも、1960年代、70年代に、タイ軍政下で反政府活動に身を投じた人たちだ。彼ら共産主義コミューンは、タイの東北地方(イサーン)を拠点に活動し、その拠点はしばしば「森」という言葉で語られた。
タイに何度か足を運ぶうちに、観光ガイドを読むだけでは物足りなくなり、古書などでこうした本を探して読むようになった。はじめは興味本位で何となしに読んでいたのだが、こうした本を読み重ねていくと、タイの現代史や社会や文化などを違った角度から知ることができて面白い。
『ジット・プミサク 戦闘的タイ詩人の肖像 』
タイの反体制派の詩人ジット・プミサクの詩と、プミサクに近い人々の語るエッセイなどで構成される。プミサクは、「タイ」という言葉には本来「自由」という意味があるとし、軍政下でのタイという国が「自由」を失い、民衆から人間性を奪っていくことに危機感を覚え、それを詩作に展開していった。そしてプミサクは、反政府活動に身を投ずべく「森」へと入るも、1966年、政府軍によって射殺される。わずか35年の人生。
プミサクの詩の根底にあるのは、人間性や自由への渇望であって、現代にも通じるような普遍性を随所に感じられたりする。
『カラワン楽団の冒険 生きるための歌』
タイの音楽には「生きるための歌」(タイ語では「プレーン・プア・チーウィット」)と呼ばれるジャンルがある。カラワンは、その生みの親ともいえるバンド。バンドのメンバー、ウィラサク・スントンシー自身によるカラワン回顧録と、メンバーの一人モンコン・ウトックのインタビューなどから成る。
学生バンドだった彼らがコンサートのためにタイのあちこちを巡り、やがて「森」での反体制運動に投じるまでの青春記として読んでも、とても面白い。また、「森」の内側で活動していた彼らの葛藤の記録としても、とても面白い。葛藤は、反政府活動がやがて中国共産党の影響が濃くなるにつれ、毛沢東主義に矮小化されていく過程で決定的な違和感となる。
カラワンのリーダー、スラチャイの「ぼくは芸術家として詩をかいたり、歌をうたったりするけど、コミュニストじゃないよ。むしろアナーキストといったほうがいい。コミュニストというのはタイの政府がきめたこと」という言葉が、彼らのスタンスを的確に表しているのかもしれない。カラワン楽団に興味を持ったら、スラチャイの書いた『メイド・イン・ジャパン』というカラワンの日本滞在記と小説から成る1冊もおすすめ。
『タイ・演歌の王国』
こちらは前の2冊と毛色が変わって、タイの歌謡曲でもあるルクトゥーンとモーラムについて書かれた1冊。タイの地方の音楽を辿りながら、中央(バンコクなどの都市部)と地方=タイ東北部(イサーン)、富と貧困…といった社会構造を浮かび上がらせる。
そういえば、バンコクでタクシーに乗った時、運転手さんがやけにメロウな歌をラジオで流していた。「これって演歌っぽいな…」と思ったあの曲が、ルクトゥーンだったのだろう。そして、運転手さんは東北地方の出身者だったのかもしれない。
箇条書き美術展めぐり 森山大道の東京 ongoing(東京都写真美術館)
久しぶりの東京都写真美術館。「森山大道の東京 ongoing」を見に行く。土曜日の昼前だったが、すごく空いていた。このところの新型コロナ陽性数の増大で、外出を控えているのだろうか…。美術館側のコロナ対策としては、検温、消毒はもちろんのこと、エレベーターの利用人数制限(4人)、会場内の人の距離の取るための目印…など、気を遣っているのが見て取れた。
・「にっぽん劇場写真帖」などからシルクスクリーン印刷の大判の作品が数点。「絵画」として見れば、写真ではない別のものとして、まあ、新鮮味がなくもない。
・カラーもモノクロも、ここ数年の新しい作品が中心。今となっては、コロナ前の「マスクをしなくてもいい東京の街」の記録だ。だけど、ギラギラしているが、ドキっとしない。
・なので、逆に、コロナ感染拡大下の東京で、まさに今、どういう写真を撮っているんだろう…ということの方が気になっている。
・期待値が高かったせいか、全体的に物足りない印象だった。結局、自分は、フィルムを印画紙に焼き付けるまでの一連の作業を森山大道の作品として見ていて、頑なにそれが好きなんだろうと認識する。
【森山大道の東京 ongoing】
— 東京都写真美術館 (@topmuseum) 2020年7月13日
作家自身のポートレイトといわれることもある、代表作《三沢の犬》。本展では1メートルを超える大迫力サイズのオリジナルプリントを展示中!ゼラチン・シルバー・プリントならではの質感を間近でご覧ください。https://t.co/0OopVy8Ieu#森山大道 #東京都写真美術館 pic.twitter.com/ZV4KJITFNG
【森山大道の東京 ongoing】
— 東京都写真美術館 (@topmuseum) 2020年7月7日
壁一面を埋め尽くすのは、『Lips』より。12メートル超の壁面いっぱいに、なんと108つの唇が並んでいます!作品の前に立つと連続するイメージに取り囲まれるかのようです。圧倒的なインパクトを全身で体感してみては。https://t.co/0OopVy8Ieu#森山大道 #東京都写真美術館 pic.twitter.com/AaQihafFUG
【森山大道の東京 ongoing】
— 東京都写真美術館 (@topmuseum) 2020年7月2日
森山大道といえば、モノクロ写真を思い浮かべる方も多いかもしれません。本展は森山のカラーにも着目!森山独特の艶やかで、鮮やかな色彩のカラー写真とモノクロの対比を、ぜひ会場で体験してください。https://t.co/0OopVy8Ieu#森山大道 #東京都写真美術館 pic.twitter.com/InlU2frmf6
箇条書き美術展めぐり 真喜志勉 Turbulence 1941-2015(多摩美術大学美術館)
大きな美術館でメディアに出まくりの美術展を見に行くのもいいけれど、たまにはこうしてローカルな大学美術館で、これまで未知だった作家の画にふれるというのも、いいものである。
・真喜志勉は、沖縄出身の画家。「Turbulence」とは「乱流」という意味である。
・真喜志勉の画家人生は、本土返還や米軍基地といった沖縄が抱えつづける問題とともにあり、画風を何度も大きく転換しながらも、その画の向こうには「米軍」「基地」の姿が見えてくる。
・画業を俯瞰すれば、「乱流」のような作風の転換は、そのまま沖縄が巻き込まれている「乱流」の映し鏡であり、その時代時代で最適な描き方をチョイスをしているのだろう。